年末の風物詩として定着しクリスマス、紅白歌合戦に匹敵する国民的イベントである有馬記念をこれよりいくつかの視点から考察していきます。
舞台となる中山競馬場2500Mのスタート地点は、外回りコースの3コーナー手前からとなり2週目は内回りコースとなります。1週目の正面スタンド前で最初の急坂を迎え、1~2コーナーの中間までは上り坂となって内回りコースに入ります。向こう正面は平坦となり、3~4コーナーは緩い下り坂となっています。直線は310Mと短く再びゴール前の急坂を越える為、スタミナを要する舞台となっています。
コーナーは6回あるので、内枠から立ち回りに必要な機動力を活かすことが出来れば、距離やスタミナをごまかせるという舞台でもあります。
上の表は過去10年の勝ち時計、ペース、上がり3F、スタート後の100Mを除いた前半、中盤、後半の4F毎のタイムとなります(1Fは200M)。
*前半~後半までで赤字 > 緑字 > 青字の順で速さを示しています
馬場差などはありますが、過去10年で前半が最も速かった年が5回、後半が5回とその年の逃げ馬のタイプによって前後半差のタイム差はあるものの、概ね中盤のペースが最も緩んでいると同時に、上がり3Fも時計が掛かっていることが分かります。補足事項としては、ペースが例年同じようなレースとだと平均値からレースの展開が見えてくることもありますが、有馬記念に関しては年によって大きく異なる為、平均値を取ってしまうと見誤る可能性があります。
例外として、2019年は引退レースのアエロリットが大逃げを打ったことで、前半が速く後半に連れてタイムが遅くなっています。
2013年はオルフェーヴル、ゴールでシップという、スタミナを活かした後方からの捲りを得意とする2頭がいた為、中盤と後半が同タイムとなるレースでした。
レースのカギを握ることになる中盤4Fのタイムは、最も速い年で48,3秒に対して最も遅い年で53,7秒と5,4秒もの差があります。こういったケースは中距離G1などではあまり見られません。
中盤が緩めば、先行勢は道中に息を入れられると同時に、後半に脚を残すことが出来ます。後方勢としても、追走が楽になり馬群は一塊となり易くなります。直線では馬群が凝縮していることもあって、後方勢は前が壁になる恐れもあり、また不利を受ける可能性のある馬群を通すよりも、不利を受ける可能性の低い外を回さざるを得ないコースロスと負荷が掛かります。しかし、中盤が緩まなければ、先行勢は後半に脚が残りにくく馬群も縦長となる為、後方勢は外を回すコースロスが最小限に抑えることが出来ます。
このことからも、レース全体のペースを読むと同様かそれ以上に、中盤のペースを読むことは大変重要となります。
これからはゴールまでの後半6F(1Fは200Mなので1200M)のラップを見ていきましょう。
*ラップ差は前の1Fとの最大であったラップ差となります
*赤太字は中盤以降最も速いラップです
先ほど2019年と13年が例外として取り挙げましたが、これを見るとこの2年以外との違いが分かると思います。
注目したいのは、ほぼ全ての年でラスト5F地点(ゴールまで1000M)で0,6秒以上ペースが上がっています。年によっては、ラスト5F地点最速やラスト3Fもしくは2F地点最速、分散されていたり多少の違いはあるものの、後半の持続性能を問われるロンスパ戦となっていることが分かります。
また、上の上がり3Fを見ても34秒の年はありますが、ほとんどが35秒台から36秒台と上がりが掛かっていることからも、東京競馬場のレースなどで求められる33秒台のキレ味は必要ではなく、瞬発力 < 持続力、ゴール前の急坂を2回越えながら、後半5Fのロンスパ戦に対応するためのスタミナが非常に大切なレースだということが分かります。
この有馬記念というレースは、これまで瞬発力勝負では分が悪く能力を最大限に発揮できなかったようなタイプやスタミナ寄りのタイプ、持続力勝負で実績を挙げてきたようなタイプを評価すべきであることがお分かりいただけると思います。